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お手軽マクロ、してみませんか?(お手持ちのレンズにクローズアップ編) [スタッフRの「撮影に行こう」]

こんにちは、スタッフRです。
今回もお安くお手軽に「マクロ撮影*1」をしてみようというお話です。
「マクロ撮影」は身近な世界をクローズアップして撮ることで、普段とは異なる写真を撮ることができます。
被写体を探しやすいことから、標準ズームレンズ*2の次に検討する交換レンズとしてマクロレンズ*3が候補に挙がることも多いですね。
ですが、比較的高価なマクロレンズも多く、なかなか購入に踏み切れない方もいると思います。
また、いざ買ってみても「標準レンズに加えてもう一本持ち出すと荷物が多くなるし、かといってマクロレンズだけだと不安…」と二の足を踏む方もいるかと思います。

以前「レンズを逆向きに付けるとマクロ撮影ができる」という記事を掲載しました。

しかし、この方法は「マニュアルでの露出合わせ」「マニュアルでのピント合わせ」となり、少々敷居の高い方法です。
もっと簡単な方法が、今回ご紹介する「クローズアップレンズ」を使ったマクロ撮影です。

161208-00-closeup.jpg

「クローズアップレンズ」とは、カメラ用アクセサリとしてはレンズの前面に取り付ける「フィルター(レンズフィルター)」に分類されます。
ただし、通常の「フィルター」が平板ガラスを使っているのに対し、「クローズアップレンズ」はその名の通り「レンズ」です。
使い方は簡単で、交換レンズの前に、更に「クローズアップレンズ」を付けるだけ。
これだけで、より「近付いて、大きく撮影」することができるようになります。
クローズアップレンズには「No.x」と番号が記載されていて、この番号が大きいほど大きく撮影できるようになります。
また、画質は落ちますが複数のクローズアップレンズを重ね合わせて使用することで、更に大きく撮影できるようになります。

この方法の一番の利点は「フィルターと同じように取り付けるだけ」という点。
カメラ・レンズの機能をほとんど損なうことがないため、露出*4調整は普段通りカメラ任せのオートモードを活用できます。
ピント*5合わせも同様にオートフォーカス*6を使用できます。
(マニュアルフォーカス*7の方がピントを合わせやすいかもしれません)
値段も数千円からと手頃で、サイズも少し厚めのフィルター程度であるため、持ち出しも苦にならないはずです。
前回の記事では色々とカメラの知識が必要でしたが、今回は更にお手軽ですね。

欠点を挙げるとすれば、「フィルター径に合わせたクローズアップレンズが必要」なことくらいでしょうか。
また、クローズアップレンズを取り付けた状態では「ピントの合う範囲をずらした」ような状態のため、無限遠にはピントが合わなくなります。
画質は「専用に設計された」マクロレンズにはさすがに負けると思いますが、お手軽に撮影するのなら問題ないと思います。

・「なぜクローズアップレンズを取り付けるとマクロ撮影できるの?」
しっかりと原理から説明すると難しくなってしまうので、ここではざっくりとした説明のみとさせていただきます。
「クローズアップレンズ」とは、実は単純な「凸レンズ」。 「交換レンズ(=凸レンズ)」の前に「凸レンズ」を付けているわけですね。
(もちろん、光学的な特性がしっかりしたものを使用しています)
161208-00-closeup-image.jpg
(あくまで図はイメージです)
凸レンズは、光を収束させる働きをします。虫眼鏡と同じです。
虫眼鏡を通して見ると、実際の物体よりも大きくなった虚像を見ることができるため、物体を拡大して見ることができます。
人間の眼も「レンズ」ですので、「クローズアップレンズ」は、カメラの交換レンズ用の「虫眼鏡」というわけです。
(実際に虫眼鏡で代用することもできますが、画質的にも「お試し」程度に留めた方がいいと思います)
・「具体的な最大撮影倍率は何倍になるの?」
撮影倍率の計算には、レンズの構成を踏まえてしっかりと計算しないといけないため結構厄介なお話になってきます。
(レンズの近接撮影時の繰り出し量と焦点距離が分かれば近似計算は可能です)
あらかじめ最短撮影距離*8で同じ被写体を撮影し、撮影倍率を計算しておくのが一番分かりやすいかもしれません。
(元のレンズが0.3倍で1000pxの大きさで写り、取り付け後に2000pxで写ったのであれば0.6倍です) ちなみに、焦点距離*9が長いレンズの方が効果が大きいです。
・「最短撮影距離は何cmまで寄れるの?」
これも難しく、レンズによって異なりますが、逆に「何cmから寄れるのか」はすぐに分かります。
実はクローズアップレンズにはそれ自身の焦点距離が記載されていて、取り付ける交換レンズのピント位置が無限遠の時、撮影距離はクローズアップレンズの焦点距離となります。
例えば、クローズアップレンズの焦点距離が500mmの場合、ピント位置「無限遠」は「50cm(=500mm)」となり、具体的な最短撮影距離は分かりませんが50cm未満の距離でピントが合うようになります。


さて、作例とまいりましょう。
今回、カメラには「PENTAX K-1」、レンズには「smc PENTAX-FA 28-105mm F3.2-4.5 AL [IF]」を使用しました。
クローズアップレンズとして、複数のレンズにより色収差*10を補正したアクロマート*11レンズの「Kenko ACクローズアップレンズ No.2」を使用しました。
写真はRAW*12モードで撮影し、RAW現像*13・調整には「SILKYPIX Developer Studio Pro 7」を使用しています。

161208-01-kinsenka.jpg

花壇に咲いていたヒメキンセンカ。冬場でも咲き誇る、まさしく寒さ知らずの花ですね。
「smc PENTAX-FA 28-105mm F3.2-4.5 AL [IF]」は最大撮影倍率が0.19倍。
ひと昔前のレンズとはいえ、このクラスの標準ズームとしては一般的な倍率です。
ヒメキンセンカはこの時期の花としては大きいため、あまり気になりませんでしたが、やはり「もう少し寄りたい」と思うケースがよくあります。
そこで、クローズアップレンズを取り付けて再度撮影してみました。

161208-02-kinsenka-closeup.jpg

かなり大きくなりましたね。
先程の写真では左側に写っていた花壇のフェンスが邪魔な感じがしましたが、花だけを写すことができました。
花の大きさでざっくりと計算すると、0.3倍くらいには撮影できているようです。
取り付け前と比べて、気持ちもう一歩寄れる、といった感じでしょうか。

161208-03-tsuwabuki.jpg

満開のツワブキの花。こちらもこの時期に目立つ花ですね。
逆光*14で撮影し、現像時にハイキー*15に調整。
あえてホワイトバランス*16を赤方向にずらしてみました。
広角*17気味ですが、背景の葉が輝いていたため見事にボケてくれました。

161208-04-tsuwabuki-closeup.jpg

クローズアップレンズを付けることで、このようになりました。
背景の大きさだけでなく、ボケの大きさも変化しています。
この被写体の場合、クローズアップレンズを付けた方がいいのかは意見が割れそうな気もしますね。
撮影時の意図に応じて、使い分けが必要です。

161208-05-weight.jpg

無機質なテントウェイトを撮影。
SILKYPIXのテイスト「ハードモノクローム」でコントラスト*18を高めて、更に無機質っぽさを強調してみました。

161208-06-weight-closeup.jpg

クローズアップレンズを付けて撮影。
先程は「複数のウェイトの並び」がわかりましたが、ここまで寄ると周りを取り除くことができます。
「ウェイト表面のザラザラした質感」が、より感じられる写真になりました。

161208-07-kamemushi.jpg

ふと、手すりにカメムシがとまっていたので、背景の葉を活かして撮影。
絞り*19をF11まで絞り込むことで、六角形の絞り形状を反映させています。
どうやら「ミナミトゲヘリカメムシ」という南国に多いカメムシのようですね。
調整時にSILKYPIXのテイスト「ノスタルジックトイカメラ」を使用しています。

161208-08-kamemushi-closeup.jpg

クローズアップレンズを付けて撮影。
さすがにカメムシは動いてしまいましたが、印象はかなり変わりました。
よりクローズアップした様子が分かるかと思います。

今回は、「クローズアップレンズ」を使ったお手軽マクロ撮影をご紹介しました。
一眼カメラは標準ズームレンズしか持っていないけど、ちょっとマクロ撮影に興味が出てきた、そんな時にいかがでしょうか。
あるいは、既にマクロレンズを持っているけどあまり出番が無い、そんな方にもオススメです。
道端で、旅先で、あるいはちょっとしたお出かけで気になるものを見かけたら、クローズアップレンズを付けて近寄ってみましょう。
もう一歩踏み込んだ写真は、きっといつもの写真と少し違って見えてくるはずです。



*1 マクロ撮影とは、被写体に近づいて拡大して撮影することです。
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*2 広角から望遠までの一般的なシーンの撮影に向いたズームレンズを標準ズームレンズといいます。35mm判換算で28-80mm(APS-Cで18-55mm)のものが多いです。
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*3 マクロレンズは、小さな被写体を大きく写すことのできるレンズです。
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*4 露出とは、記録される写真の明るさのことです。 露出はレンズの絞りやシャッタースピード、そしてセンサの感度により決まります。
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*5 ピントとは、結像点のことをいいます。ピントが合っている部分が鮮明に写るため、メインとなる被写体にピントを合わせるのが写真撮影の基本となります。
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*6 オートフォーカス(AF)とは、ピントをカメラが自動的に合わせる機能のことです。
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*7 ピント合わせを撮影者が手動で行う方式をマニュアルフォーカスといいます。
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*8 最短撮影距離とは、レンズがピントを合わせることのできる最短の距離のことで、レンズ交換が可能なカメラでは通常センサから被写体までの距離となります。
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*9 焦点距離とは、レンズの中心点(主点)から焦点までの距離のことです。焦点距離が短いと画角が広く、長いと画角が狭くなります。
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*10 色収差とは、レンズの分散が原因で像に色ズレが生じることをいいます。
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*11 アクロマートとは、屈折率と分散の異なるレンズを組み合わせ、2つの波長で色収差を補正したレンズのことをいいます。
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*12 RAWデータとは、デジタルカメラにおいてイメージセンサが捉えた光の情報をそのまま記録したデータのことです。
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*13 RAW現像とは、デジタルカメラのセンサから出力された未加工のデータ(RAWデータ)をJPEGやTIFFなどの汎用画像ファイルに変換する処理のことをいいます。RAWデータはJPEG画像よりもデータ量が多いため、RAW現像では高画質な写真編集を行うことができます。
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*14 レンズが光源を向いている状態を逆光といいます。逆光では光と影の明暗差が大きくなるためコントラストが高く、光を印象的に写すことができます。また、レンズフレアが出てぼんやりと写ることもあります。
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*15 ハイキーとは、意図的に露出オーバーにする(明るくする)ことを言います。写真全体を明るくすることで、爽やかな印象に仕上げることができます。RAW現像では撮影後に露出補正やトーンカーブで調整することができます。
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*16 ホワイトバランスとは、光源の影響を打ち消したり、強調したりするために色味を変更する機能です。ホワイトバランスを調整することで、「自然な色」の再現のほか、作品としての「色作り」を行うことができます。
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*17 広角とは、画角(写る範囲)が広いことをいいます。35mm判換算で50mm付近の焦点距離を標準といい、これよりも短い焦点距離を広角といいます。
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*18 コントラストとは、最も暗い部分と最も明るい部分の輝度の差のことです。コントラストが高いとはっきりとした印象になります。
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*19 絞りとは、レンズから入る光の量を調整する機構のことです。
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