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引き伸ばしレンズでマクロ撮影してみました [スタッフRの「撮影に行こう」]

こんにちは、スタッフRです。
今回は、またちょっとディープなお話です。
みなさん、「引き伸ばしレンズ」ってご存知でしょうか。
実はこちらの記事で軽く触れたことがありますが、現像したフィルムを印画紙に焼き付けるために用いるレンズです。
フィルムから拡大して投影させるためのレンズであるため、ピント*1面の像のシャープさが要求されるレンズといえます。
このため写真撮影に使用してみたいと考える人も多く、調べると色々なレンズでの作例が見つかることと思います。
近年はデジタルカメラ*2で撮影される方がほとんどのため、フィルムの現像所(「ラボ」といいます)も少なくなり、引き伸ばしレンズが中古で安価に出回っています。

今回はこの「引き伸ばしレンズ」を使用してマクロ撮影をしてきました。

160205-10-fujinar.jpg

使用したレンズは「Fuji Photo Optical Co. FUJINAR-E 7.5cm F4.5」で、富士フイルムの子会社「富士写真光機」が製造したレンズです。
富士写真光機は、その後フジノンを経て富士フイルムに吸収、現在は光学デバイス事業部となっています。
このレンズは多くの引き伸ばしレンズと同じく、マウント*3はライカLマウント(L39マウント、39mmスクリューマウント)互換のねじ込みマウント*4。本来は「引き伸ばし機」という機械でピント調節をするため単体でのピント調節機構は持ちません。
そのため、今回のようにレンズ交換式カメラ*5で使用する場合は、ベローズ*6等のピント調節用のアクセサリと組み合わせる必要があります。
(今回は一眼レフカメラ*7で使用しましたが、もちろんミラーレス一眼カメラ*8でも同様の構成となります)

ただし、引き伸ばしレンズごとに必要なフランジバック*9の情報が不明なため、無限遠*10にピントが合うかどうか使ってみるまでわかりません。
使いたい引き伸ばしレンズのフランジバックがお使いのカメラのマウント規格のフランジバック(+ベローズ等のピント調節用のアクセサリ分の長さ)よりも長い場合、無限遠にピントを合わせることができます。
仕様書やマニュアルがあるなら事前に確認できますが、中古の安価な引き伸ばしレンズには付いていないことがほとんどですので、実際に取り付けて確認する必要があります。
(たとえば、こちらの「BORG 50mm F2.8(2850)」のように仕様が公開されていれば、事前に調べることもできます)

ちなみに、このレンズは凸凹凹凸の3群4枚のレンズ構成で、いわゆるテッサータイプの光学系です。
こちらの記事で使用した「smc PENTAX-M 50mm F4 Macro」同様、解像力*11に期待ができますね。

*余談ですが、テッサータイプのレンズの弱点に「焦点移動」という現象が存在します。
この現象、絞り開放と絞り込んだ状態とでピント位置が異なるという現象で、特に近接領域で生じやすくなるので注意が必要です。

160205-11-fujinar.jpg

今回は「PENTAX K-3II」に組み合わせて撮影しました。
ベローズユニットは「PENTAX Auto Bellows M」に「L39-M42マウントアダプター」を介して取り付けています。
残念ながらこのレンズのフランジバックでは無限遠での撮影ができませんでしたので、以下は全てマクロ撮影*12です。
以下、写真は「SILKYPIX Developer Studio Pro 7」にて現像しました。

160205-01-fujinar.jpg

まずは、近場のヒメツルソバを一枚。
本来は淡いピンク色の花ですが、さすがに時期を過ぎたため白っぽくなっています。
開放F値*13がF4.5とはいえ、望遠*14であること、近接域*15での撮影であることから背景は見事なボケ方です。

160205-02-fujinar.jpg

続いて垣根のサザンカを、と思いましたが見事に手ブレ*16してしまいました。
一般的な撮影では「焦点距離分の1」のシャッタースピード*17であれば手ブレしにくいといいますが、マクロ撮影では当てはまりません。
また、風の影響等で被写体ブレ*18も起きやすくなります。
今回のような構成では、ベローズユニット自体の重量もあるので、手持ちならなるべく速いシャッタースピードでの撮影をオススメします。
三脚が使用可能ならぜひ使っておきましょう。連写するのも手です。

160205-03-fujinar.jpg

ツワブキの種子を撮影。
結果を見て思わず叫びたくなるような解像感。
綿毛の根元の縮れまで鮮明に写りました。

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こちらも少し手ブレしましたが、マツの芽を。
普段は見ない世界、少し大きく写すだけでもやはり面白いです。

160205-05-fujinar.jpg

すっかりおなじみのエノコログサ。
この時期のものは、まさしく「枯れ色」ですね。
と、ふと執筆中に伝統色名を使ってしまいましたが、SILKYPIXのアートテイスト企画「創像」というページにダブルトーン*19風「日本の伝統色」テイストがあります。
今回これに似せて「枯れ色」テイストを作ってみました。



ZIPにて圧縮していますので、ダウンロード後展開し、SILKYPIXにインポートしてください。
詳しくはこちら(SILKYPIX「創像」テイストの使い方)を参考にしてください。

先ほどの写真に、このテイストを適用したものがこちら。

160205-06-fujinar.jpg

スナップ*20などに適用すると、ハイキー*21気味なセピア写真*22のようになると思います。
ぜひ、色々な写真に試してみてください。

160205-07-fujinar.jpg

さて、こちらはアベリアでしょうか。
花粉や花の表面の毛まで解像しています。

今回は引き伸ばしレンズ「Fuji Photo Optical Co. FUJINAR-E 7.5cm F4.5」で撮影した写真をご紹介しました。
中古で安価に出回っていることの多い引き伸ばしレンズ、既に撮影可能なシステムが揃っていれば試してみてはいかがでしょうか。
ベローズを使ってのんびりと撮影するのもいいものですよ。



*1 ピントとは、結像点のことをいいます。ピントが合っている部分が鮮明に写るため、メインとなる被写体にピントを合わせるのが写真撮影の基本となります。
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*2 デジタルカメラとは、撮像素子で撮影した画像をデジタルデータとして記録するカメラのことです。
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*3 マウントとは、カメラとレンズの接合部のことです。
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*4 ねじ込み式マウントとは、カメラとレンズの接合部にネジが切られていて、レンズを回転させてボディにねじ込んで固定するマウントのことです。
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*5 レンズ交換式カメラとは、光学式レフレックスファインダーを備えた一眼レフカメラと、電子ビューファインダーや液晶ディスプレイをファインダーとして使用するミラーレス一眼カメラとを合わせた総称で、レンズ交換が可能なカメラを指します。
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*6 ベローズとは、蛇腹のことで、紙や布等で山折りと谷折りを繰り返した構造のことをいいます。カメラではピント調整機構として使用され、調整範囲を大きくすることが容易なため接写装置として用いられます。
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*7 一眼レフカメラとは、撮像面とレンズの間に鏡を置く構造のカメラのことです。実際の撮影イメージを光学ファインダーで確認することができ、視差も生じないという利点を持ちますが、その分内部機構が大きくなるという欠点もあります。
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*8 一眼レフカメラの光学ファインダーの代わりに、液晶モニターや電子ビューファインダーを見ながら撮影するレンズ交換式のデジタルカメラのことです。一眼レフカメラから鏡を廃した構成であるため、内部機構が簡略化でき、小型軽量なものが多いです。
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*9 フランジバックとは、レンズのマウント面からセンサ面までの距離をいいます。
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*10 無限遠とは、非常に遠い撮影距離で、それ以上遠方の被写体にもピントが合うようになる距離のことをいいます。レンズの仕様は通常無限遠を基準にされています。
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*11 解像力とは、レンズを通して結像した像がどこまで細かいものを再現できるかをいいます。
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*12 マクロ撮影とは、被写体に近づいて拡大して撮影することです。
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*13 開放F値とは、レンズの絞りを最大に開けた状態、一番光を取り込める状態のF値です。 (F値は小さいと明るく、大きいと暗くなります)
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*14 望遠とは、画角(写る範囲)が狭いことをいいます。35mm判換算で50mm付近の焦点距離を標準といい、これよりも長い焦点距離を望遠といいます
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*15 近接とは、近寄って撮影することをいいます。
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*16 手ブレとは、シャッターが開いている間に撮影者が動くことにより生じるブレです。写真が何枚も重なったように写り、写真の鮮明さが損なわれます。
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*17 シャッタースピードとは、シャッターが開いてから閉じるまでの時間(露光時間)のことをいいます。
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*18 被写体ブレとは、シャッターが開いている間に被写体が動くことにより生じるブレです。
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*19 ダブルトーンとは、黒1色のモノクロ写真に、更に1色加えた2色で写真を表現する方法です。
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*20 スナップとは、日常の風景、人物の飾らない様子や素振りなど、気になったものや瞬間を素早く撮ることをいいます。
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*21 ハイキーとは、意図的に露出オーバーにする(明るくする)ことを言います。写真全体を明るくすることで、爽やかな印象に仕上げることができます。RAW現像では撮影後に露出補正やトーンカーブで調整することができます。
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*22 セピア調とは、茶褐色や暗褐色のモノトーン調をいいます。モノクロの印画紙が経年劣化した色であり、古さの演出に用いられます。
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