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ネガフィルムをデジタル化してみませんか? [RAW現像してみよう]

こんにちは、スタッフRです。
先週の記事では、フィルムカメラ*1Ricoh XR500Auto」で撮影した写真を掲載しました。
フィルムは、ネガフィルム*2「Kodak GOLD 100」。
今回はどのようにネガフィルムをパソコンに取り込み、RAW現像*3したかをご紹介します。

目次



  1. ネガフィルムの準備
  2. RAWモードでの撮影によるデジタル化
  3. RAW現像でネガ反転とレベル補正
  4. 最終調整
  5. まとめ


1. ネガフィルムの準備



まずは、取り込むための現像済みネガフィルムを用意しましょう。
ここでの「現像」とはデジタルの「RAW現像」ではなく、撮影済みのネガフィルムに画像を定着させる作業のことです。
フィルムを写真屋さんやDPE店に持って行くと、「同時プリント」として引き伸ばした写真が印刷されて出てきますが、このときネガフィルムを一緒に渡してもらえると思います。
このネガフィルムが「現像済みネガフィルム」です。
もちろん、この作業は現像ラボにおまかせでも問題ありません。

151204-01-film.jpg

押し入れや引き出しに眠っているフィルムがあればそれでも構いませんが、古いフィルムの場合は退色(褪色)*4し、色が変化してしまっている可能性があります。
後の処理で色を出すとき、退色していると少し処理が複雑になるため、まずはなるべく新しいフィルムを使うことをオススメします。
また、取り込みには等倍以上のマクロ撮影*5が基本となるため、ネガフィルムのサイズは一般的な35mm判フィルム*6にしておきましょう。
(これ以上のサイズのフィルムの場合、機材を大きくするか、トリミングされた状態での取り込みとなります)

2. RAWモードでの撮影によるデジタル化



さて、現像済みのネガフィルムを取り込みます。

151204-02-bellows.jpg

今回は、マクロ用のベローズユニット「Nikon PB-4」にスライドコピーアダプター「Nikon PS-4」を取り付けたものを使用しました。
ベローズとは蛇腹によりピント合わせを行う装置で、上の写真で中心にレンズが取り付けられた蛇腹型の装置全体をベローズユニットといいます。
これに対し、写真右側の白色半透明の板(拡散板)が付いた部分が、取り付けたスライドコピーアダプターです。
(メーカーによっては、「スライドコピア」と名付けられています)
ベローズユニットには引き伸ばし用レンズ*7「Nikon EL-Nikkor 50mm F2.8」を取り付けています。
(余談ですが、このレンズに関する興味深い話がこちらの「知られざるニコンの歴史」に載っています)
基本的には「フルサイズ*8一眼」+「ベローズ」+「マクロレンズ*9」+「スライドコピーアダプター」という組み合わせで使用します。
カメラには、フルサイズの「Nikon D600」を使用しました。
また、ニコンの「Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D」や「AF-S Micro Nikkor 60mm F2.8G ED」をお持ちの場合は、「Nikon ES-1」というアダプターもあります。
このアダプターは、ベローズのないシンプルなスライドコピー専用のアダプターです。
別途「Nikon BR-5」等のステップダウンリングが必要ですが、ベローズは重く仰々しいという方は、こちらのアダプターの方がオススメです。

ちなみに、「フルサイズのカメラなんて持ってない!」という方もご安心を。
Kenkoから「スライドデジコピアDSLR」というAPS-Cサイズ*10に最適化されたスライドコピー専用のアダプターが発売されています。

151204-03-filmcopy.jpg

上の写真の右側のように、ネガフィルムをスライドコピーアダプターのホルダーに取り付け、光源*11を拡散板に当てて撮影します。
リバーサルフィルム*12の取り込みの場合は、拡散板に当てた光源にホワイトバランス*13を合わせますが、ネガフィルムの場合はこの後の処理で合わせるため、特に気にしなくても構いません。
フィルムにピント*14を合わせるため、ある程度絞った*15方がいいですが、絞りすぎるとセンサ*16のゴミが写り込むため気を付けましょう。
露出*17については、白とび*18や黒つぶれ*19がなければ問題ないと思います。

一点、重要なことを忘れていました。
この後の処理で、ネガフィルムの色(オレンジベースといいます)を必要とします。
フィルムの各コマ(写真)の撮影の他、何も写っていない部分(プリントすると真っ黒になる部分)も一枚撮影しておきましょう。

3. RAW現像でネガ反転とレベル補正



取り込んだ画像を見てみましょう。
先週の記事で使用したリコリス園芸種の写真で調整したいと思います。

151204-04-thumbnail.jpg

ネガフィルムのオレンジベースが中心の、オレンジなサムネイルが並んでいます(笑
今回は「SILKYPIX Developer Studio Pro 6」を使用した説明ですが、それ以外のRAW現像ソフトでも構いません。
ただし、最低でもRGB個別にヒストグラムの表示・トーンカーブの変更可能なソフトが必要です。
ヒストグラムやトーンカーブについてよくわからない場合は、SILKYPIXのこちらのページも参考にしてみてください。
まずは、先ほど一枚撮影したオレンジベースの写真に対し、グレーバランスツールを使います。

151204-05-gray.jpg

オレンジベースに対して、グレーとなるようなホワイトバランスが適用されました。
これは、正確には「取り込みに使用した光源」+「オレンジベース」を基準としたホワイトバランスです。
オレンジベースはフィルムのメーカーやブランドによって色が異なります。
また、フィルムの取り込み時の光源等、環境によってもホワイトバランスのパラメータは異なります。

これと同じホワイトバランスの設定(色温度・色偏差)を、他の写真にも適用します。
SILKYPIXであれば、現像パラメータのコピー・貼り付けにより複数の写真に同じ設定を適用できます。

151204-06-gray.jpg

オレンジベースの色を差し引いただけなので、写真はネガのまま、反転しています。
この画像に対し、RGBチャネルのトーンカーブを反転させます。

151204-07-negtone.jpg

SILKYPIXでトーンカーブを反転させる場合、「RGBチャネル」を選択し、カーブの左端を上にドラッグし、右端を下にドラッグします。
数値では、以下のようになります。

  • 入力0、出力0 → 入力0、出力255
  • 入力255、出力255 → 入力255、出力0


今回、このトーンカーブ反転のテイストを用意しました。
SILKYPIXをお持ちの方は以下からダウンロードして使ってみてください。


ZIPにて圧縮していますので、ダウンロード後展開し、SILKYPIXにインポートしてください。
詳しくはこちら(SILKYPIX「創像」テイストの使い方)を参考にしてください。

さて、ここまででうっすらと色が出てきたと思います。

151204-08-negtone.jpg

とりあえず、ヒストグラムを見てみましょう。

151204-09-hist.jpg

両端は何もなく、かなり急峻な山が中央にあると思います。
細かいことは省きますが、ヒストグラムの左側は暗い箇所を、右側は明るい箇所を表し、写真のピクセル一つ一つがどの明るさにあるのかを見ることができます。
ヒストグラムの左端が突き出ていると黒つぶれ、右端であれば白とびを表します。
この写真のヒストグラムから、白とびや黒つぶれは生じていないことがわかります。
一方、山は右寄りで、中心よりも左にはありません。
これは暗い部分がほとんどないことを表しますが、本来の写真はもっと暗い部分が含まれているはずです。
このような状態を、シャドウに浮きがあるといいます。
また、理想的なヒストグラムは暗い部分から明るい部分までまんべんなく山が広がっている状態です。
このヒストグラムは中間調がほとんどを占め、コントラストが低くメリハリのない写真になっていると言えます。
こんなとき、トーンカーブを使って「レベル補正」を行い、シャドウを黒く締め、ハイライトを白く鮮明にすることで、コントラストを上げて写真にメリハリを出すことができます。

今回はRGB個別にヒストグラムの調整を行います。まず、ヒストグラムの表示を「Rチャンネル」に変更し、R成分のみにします。
この状態で、Rのトーンカーブの左側を右に、右側を左にドラッグし、範囲を狭めてレベル補正します。
このとき、ヒストグラムを見ながら、山がぎりぎり全体に収まる程度を目安とします。
トーンカーブを反転しているので、通常のレベル補正とは逆の動作になる点に注意してください。

151204-10-level.jpg

この時点ではR成分のみを調整しているため、写真は変な色味になっていると思いますが、気にせずにG成分、B成分についても同様の調整を行います。

151204-11-level.jpg

いかがでしょうか。
しっかりと色が引き出せたと思います。
(この花はヒガンバナではなく、もともとピンク色のリコリス園芸種です)
トーンカーブをRGBそれぞれについて調節したら、プレビュー画面を確認し、写真に違和感が出ないようにトーンカーブを少しずつ調整していきます。

4. 最終調整



ここまでで、写真に違和感があり、もっと調整したい場合があるかもしれません。
その場合は「ホワイトバランス微調整」や「ファインカラーコントローラ」で追い込んだり、トーンカーブを更に調整したりするといいでしょう。
ただし、トーンカーブを反転していることを忘れないように。
例えば、この写真は日陰での撮影です。
見た時の印象に近づけるため、もっと黄色味を出すように調整します。
ここでは、青と赤のシャドウを調整したいと思い、トーンカーブの青と赤のハイライト*20側を微調整しました。

151204-12-final.jpg

トリミング等の輝度*21に影響しないパラメータは、当然ながらそのまま使用できます。
前回の記事で使用した写真では、もっとコントラストを高め、赤以外の彩度*22を落とすように調整しています。

5. まとめ



今回は、ネガフィルムの取り込みと、SILKYPIXを使ったRAW現像について紹介しました。
多少手間はかかりますが、ネガフィルムをRAWモードで撮影しておくことで、劣化の少ないデジタル化が可能です。
SILKYPIXのスポッティングツールにより、フィルム取り込み時に付着したゴミの除去もできます。
写真の整理だけでなく、フィルムカメラによる作品作りもできますので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
久しぶりにフィルムカメラを使ってみるのも楽しいですよ!



*1 フィルムカメラとは、被写体像をフィルム(写真フィルム)に露光するカメラです。フィルムの感光剤に銀化合物(銀塩)を用いることから銀塩カメラともいいます。
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*2 ネガフィルムとは写真フィルムの一つであり、明暗や色が反転した状態で記録されるフィルムのことです。写真フィルムとしては最も身近で、印画紙へのプリント時に補正がしやすいという特徴があります。
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*3 RAW現像とは、デジタルカメラのセンサから出力された未加工のデータ(RAWデータ)をJPEG画像に変換する処理のことをいいます。RAWデータはJPEG画像よりもデータ量が多いため、RAW現像では高画質な写真編集を行うことができます。
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*4 褪色とは、ネガフィルムの色素の劣化により、カラーバランスが崩れ、色が褪(あ)せる現象のことをいいます。
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*5 マクロ撮影とは、被写体に近づいて拡大して撮影することです。
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*6 写真用フィルムのフォーマットとして最も一般的なもので、通常は金属製のカセットに納められています。大きさは24 x 36 mmです。
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*7 引き伸ばしレンズとは、現像したフィルムを拡大・投影して印画紙に焼き付ける際に用いるレンズです。多くはライカLマウントで、単体でのピント合わせ機構を持ちません。
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*8 フィルムカメラの「35mmフィルム」フォーマットとほぼ同じ大きさ(おおよそ36 x 24 mm)です。
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*9 マクロレンズは、小さな被写体を大きく写すことのできるレンズです。
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*10 コンパクトな「APS (Advanced Photo System)フィルム」の「Cサイズ」とほぼ同じ大きさ(おおよそ23 x 15 mm)です。
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*11 光源とは、被写体を照らす光のことです。太陽光等の天然光源の他、蛍光灯や電球等の人工光源を総称していいます。
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*12 リバーサルフィルムとは写真フィルムの一つであり、スライド映写などで直接鑑賞できるポジの状態で記録されます。ポジフィルムやスライドフィルムとも呼ばれ、ネガフィルムに比べ彩度に優れています。
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*13 ホワイトバランスとは、光源の影響を打ち消したり、強調したりするために色味を変更する機能です。ホワイトバランスを調整することで、「自然な色」の再現のほか、作品としての「色作り」を行うことができます。
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*14 ピントとは、結像点のことをいいます。ピントが合っている部分が鮮明に写るため、メインとなる被写体にピントを合わせるのが写真撮影の基本となります。
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*15 レンズの絞りを絞って撮影することで、被写界深度を深くし、ピントの合う範囲を広げることができます。
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*16 センサとは、デジタルカメラの撮像素子のことです。
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*17 露出とは、記録される写真の明るさのことです。 露出はレンズの絞りやシャッタースピード、そしてセンサの感度により決まります。
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*18 白とびとは、本来明るさに階調を持つ部分が、真っ白に記録されてしまっていることをいいます。
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*19 黒つぶれとは、本来明るさに階調を持つ部分が、真っ黒に記録されてしまっていることをいいます。
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*20 ハイライトとは、写真の中で明るい部分や白い部分のことをいいます。
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*21 ここでの輝度とは、YUV色空間におけるYのことで、人間の眼の感度を考慮した明るさ(視感反射率)のことです。
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*22 彩度とは、色の三属性の一つで、鮮やかさを表します。無彩色では0で、純色で最大となります。
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