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雨中の汽車とタクマーと [スタッフRの「撮影に行こう」]

こんにちは、スタッフRです。
今回も、オールドレンズのご紹介です。
マウントアダプター*1 を使ったオールドレンズ遊びについて、基本的な解説は以前の記事をご参照いただければと思います。
さて、今回は、このレンズを使ってみます。
150313-10-takmar55.jpg
ペンタックスの前身、旭光学工業の「Asahi Opt. Co. Auto-Takumar 55mm F2」です。
マウントは一般的に「M42マウント」や「プラクチカマウント」と呼ばれる、ねじマウントです。
このレンズは、5群6枚の標準的な「変形ダブルガウス*2 」タイプの標準レンズです。
ペンタックスの現行レンズでは、同じような焦点距離*3 のレンズに「smc PENTAX-DA★ 55mm F1.4 SDM」や、「smc PENTAX-DA 50mm F1.8」があります。
特に後者は非常に近いレンズ構成のため、今回のレンズの直系の子孫にあたるかもしれません。

このレンズ、こちらの記事でご紹介した「Asahi Opt. Co. Super-Takumar 28mm F3.5」よりも、更に古いレンズです。
古いと、何が違うのか、少し歴史を遡ってみます。
(普通、新しいレンズが出た場合は「新たにどんな機能が付いた」のかを考えますが、オールドレンズ遊びでは、時間を逆行して「どんな機能がないのか」を考えてしまいますね。)

レンズ名の「Auto」とは、いったい何を指すと思いますか?
現在のレンズの絞り*4 を制御する機構に、「完全自動絞り」というものがあります。
「完全自動絞り」では、普段はレンズの絞りを開放状態にして、シャッターを切る時だけ設定した絞りまで絞り込んで撮影することができます。
この機構により、開放状態の明るいファインダー像のもと、厳密なピント合わせが可能になります。
このレンズは「半自動絞り」という機能が実装されたレンズで、レンズ名の「Auto」とはこの機構が搭載されていることを指します。
「半自動絞り」は、現在の「完全自動絞り」になる前の過渡期の機構で、絞り込みは自動で行うものの、撮影後に開放に戻す操作(チャージといいます)が必要な機構です。
古いレンズでは「プリセット絞り」や「マニュアル絞り」という方式で、絞りを手動で直接操作する機構でした。
このため、撮影前に手動で絞りを設定し、撮影後に手動で絞りを開放に戻す必要がありました。
半自動絞りではレバーによるチャージが必要とはいえ、プリセット絞りに比べると圧倒的に撮影時の操作性が向上し、画期的な機構だっただろうと思います。
150313-11-takmar55.jpg
レンズのマウント面付近に付いているのが、絞りのチャージ用のレバーです。
(写真中の、レンズの被写界深度目盛の部分に被さるように付いているレバーです)
チャージしない状態で絞り環を動かすと、実際に絞りが絞り込まれます。
一方、チャージすると、絞り環の設定に関わらず絞りは開放状態のままになります。
この状態で、マウント面のピンが押されると、絞り環で設定された絞り値まで、絞り込まれる仕組みです。

と、ここまで「半自動絞り」について説明しましたが、マウントアダプターを使った撮影では、ピンの押し込みによる絞りの連動は働きません。
つまり、オールドレンズ遊びをする場合、実際には「チャージしてはいけない」ことになるので、注意が必要です。
チャージしてしまうと、レンズを取り外してピンを押し込まない限り、絞りを開放から変更することができなくなります。
150313-12-takmar55.jpg
ちなみに、PENTAX K-3に取り付けると、このような感じ。
開放F値*5 がF2とそれほど明るくないため、非常にコンパクトです。
なぜこのレンズを選んだかというと、「シルバーとブラックのツートンカラーの見た目がかっこいいから」です(笑

レンズの紹介はこのくらいにして、今回は雨の中を近場までお散歩です。
カメラは「PENTAX K-3」、レンズは「Asahi Opt. Co. Auto-Takumar 55mm F2」、現像には「SILKYPIX Developer Studio Pro 6」を使用しています。
マウントアダプターについては、以前の記事と同じく純正の「マウントアダプターK」を使用しました。

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千葉市の住宅街の真ん中、稲岸公園に、ポツンとSLが佇んでいます。
川崎製鉄、現JFEスチールが使用していた、NUS7という産業用の蒸気機関車です。
余談ですが、千葉市内には他にも蒸気機関車の展示があるので、興味がある方はぜひ調べてみてください。

「雨が降っている」と、あまり撮影には出かけたくないと思います。
機材は濡れるかもしれないし、場合によっては故障するおそれもあります。
何より、撮影のモチベーションが上がりません。
とても寒く、私も出かける前に「撮影やめようかな」と考えました。
ですが、「雨が降っている」ということは、「雨に濡れた被写体・景色」が撮れるチャンス。
今回は「濡れた金属」が撮りたかったので、行ってみることに。
150313-02-nus7.jpg
雨に濡れた汽笛を、運転台より開放で。
ボケも素直ですが、そこはやはりオールドレンズ。
しっかりと写しつつも、開放では少しフレアがかかったような、ぼんやりとした甘めの描写です。
パキパキとシャープに写るのではなく、落ち着いた感じがします。
少し彩度を落とし気味に、コントラストは柔らかく調整し、そして若干暗めに現像しています。
雨の中のオールドレンズでの撮影は、露出の設定が非常に難しく感じられると思います。
曇り空は思いのほか明るいので、露出を被写体に合わせたときに空が白飛びしてしまわないよう注意しましょう。

150313-03-nus7.jpg
少し暗い運転台の中、レバーを手持ちで撮影。
さすがに感度をISO800まで上げましたが、絞り開放(F2)で手ブレせず撮影できました。
展示車両の金属表面や塗膜には、鋳造時やその後の錆を由来とした凹凸が多いです。
そうした凹凸での反射光が、思わぬボケ表現となりました。
150313-04-nus7.jpg
動輪、ロッド周りを一枚。
あえて開放でボカすことで、軌条が続いているように写してみました。
毎回のことですが、趣味満載の写真撮影となりました。
全然普通と言えない作例なので、そのうちまた撮りに行こうかと思います。
(以前の記事で、こんな写真も掲載しています)

タクマーレンズは、「普通」に写り、入手も容易な、ハズレの少ないレンズです。
金属の鏡筒に、重厚なレンズが詰まった、まさに写真用レンズといった風合い。
レンズ遊びの最初の一本として、あるいは、写真用レンズの勉強用として、使ってみてはいかがでしょうか。

*1 一眼カメラのレンズを取り付ける部分をマウントといいますが、マウントの形状を変換する部品のことを「マウントアダプター」と言います。 マウントアダプターについて、詳しくはこちらの記事を参照してください。 記事に戻る

*2 50mmくらいの焦点距離の標準レンズとしてよく用いられるレンズ構成で、収差が少なく、大口径化が可能なレンズ構成です。 絞り開放では柔らかなボケが、そして絞るとシャープな画を得ることのできる、「一眼」らしさを知ることのできるレンズといえます。 記事に戻る

*3 焦点距離とは、レンズの中心点(主点)から焦点までの距離のことです。焦点距離が短いと画角が広く、長いと画角が狭くなります。 記事に戻る

*4 レンズを通過する光の量(明るさ)を調整する機構のことを、「絞り」と言います。 絞りの大きさを示すものに「F値」があり、F値が小さいと通過する光の量が多く、F値が大きいと通過する光の量は少なくなります。 記事に戻る

*5 開放F値とは、レンズの絞りを最大に開けた状態、一番光を取り込める状態のF値です。 記事に戻る

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